通勤電車で前にいた女(3)

adachi-mamoru2009-03-01



午前9時30分、俺は国道沿いの
独身者が住む賃貸マンションの前に立っていた。


駅からは15分といったところだ。
昨夜、合鍵を作っているあいだに
カフェに戻ってくるかと思いあせったが、
ポーチをカフェに届けてから5分ほどしてから
取りに来ていたから、
少し離れているのだろうと予想していたとおりだ。


レンガ風の外観が高級感を演出している。
築1、2年といったところか。
この508号室が香織の部屋だ。


実は今朝7時にはこのマンションに来ていた。
彼女、香織が出社するのを確認するためだ。


彼女は8時過ぎに出ていった。
昨日を印象が変わらない、白いワンピースに
茶系のスーツで早足で出勤していった。
昨日と違うのは今日はパンツスーツだということだ。
俺は念のため、駅の改札を入るまで後を尾けていき
そして戻ってきたのだ。


まず誰もいないと思うが、
インターフォンで508を押す。
「ピンポーン」
「…………………」
念には念をでさらにもう1回。


やはり誰もいないようだ。


俺はすでにドキドキして震え気味の手で
コピーしたカギをオートロックの入口に挿す。
ウィーンと自動が空く。


さらに心臓が早撃ちするなかエレベータへと急いだ。


チーン。
5Fについた。


5階立てのマンションの最上階。
しかもL字型のマンションの角部屋が508だった。
見通しはそれほどよくないから
これなら出入りする姿を見られる危険性も少なそうだ。


だが早いに越したことはない。



既に喉は、からからだったが、
ごくりと乾いたつばを飲み込んで
震える手でカギ穴にカギを突っ込んだ。


ガチャリ……。



開いた!



素早くドアを開けて
中へ体をいれると急いでドアを閉めた。


一人暮らしの女性の部屋なんて
学生のときに女の友達の家に行って以来だから
かれこれ15、6年ぶりだろうか。


部屋は朝の光が満ちていた。
香りのつけているオードトワレか、柑橘系のにおいがただよっている。


玄関のドアを開けたところが
6畳ほどの簡単なキッチンスペース、
その奥が8畳ほどの寝室といったオーソドックスなつくりだ。


入った後しばらくは
ドアののぞき穴から廊下を凝視していた。
心臓の鼓動もおさまってきたため、
ゆるゆると部屋の中を品定めする。



ようやく落ち着いてきた。


部屋のトーンは白基調
決して高価ではないが、
香織の部屋は木目を生かした落ち着く家具や雑貨が
整然と並べられている。


パステル系のぬいぐるみなども
若干置かれており、
若い女性の部屋という感じだ。


クローゼットを開き、
中の5段カゴを見ていくと
1番上に下着が並べられていた。


俺は思わずひとつ手にとると
よくマンガで童貞少年がやるように
匂いをかいだ。いや思わず嗅いでしまった。


ばかばかしいと思っていたが
俺のレベルもそんなものだ。


柔軟剤の香りがするだけだが
下半身は硬くなり始めていた。


ふたたび興奮してきた俺は
奥の部屋のベッドに倒れこんでみる。



あぁ……香織……



やばい!
もう我慢ができなかった。


俺はその場で香織と一緒になっている姿を
思い浮かべながら分身を激しくこすりだした……


ドビュドビュ!
もちろん香織の顔へかけることを想像しながらだ。


自分でも驚くほどの
大量の白濁した体液を
絨毯へぶちまけるとティッシュで拭き取った。


女の部屋で行なうオナニーが
こんなに気持ちいいとは、新鮮な発見だ。


きっと誰も知らないだろうという
気持ちが作用しているのだろう。



何をやっているんだ、という後悔の思いも若干はあったが
それよりもかつてない興奮で
もはやどうとでもなれ!という思いになっていた。


自分がよもやそんな行動をとる人間だとは
自分でも信じられなかったが、
その後、俺が取った行動はどう見ても
はたからみれば、
それはただの変態だった。


彼女のたたんであったパジャマを可能な限り
着てみたり、
洗ってあった彼女の箸をぺろぺろと舐めたり、
靴のにおいを嗅ぎ、
フロに入りながらふたたび自慰を行なった。



良心はとうになく、
歯止めがきかなくなっていた。



彼女の日常が知りたくなった
俺はウラモノ情報系雑誌を購入し、
その日の午後には
秋葉原の怪しげなショップに向かっていた。



そして……。



部屋へ入るのも最初のうちこそ
あわてていたが、3回目、翌週の月曜日ともなると
落ち着いたものであたかも自分の家にでも
もどるかのような自然さで出入りできるようになっていた。


最終的に香織を自分のモノにするのが目的だが、
とりあえずは香織の一部始終を観察し、楽しむことに決めたのだ。


20個ほどの隠しカメラ系の機材を買い込むと
せっせと香織の家にセットした。



コンセント分配器を模したカメラや録音機を数個。
ベッドの下。部屋の隅にまとめられていた
あまり使われていなそうな化粧品の中に電池で記録するタイプのカメラなどなど。


最新の注意を払って設置をすると、
彼女を監視するようになった。



香織はまだ何も気づいていないようだった。


電車で密着してから
1ヵ月もたたないうちに
俺は香織の寝顔を自分の家で確認できるようになっていた……。



そこで思わぬ姿を俺は
見ることになる。

(つづく)